1.学習効果は、酸素の交換状態で分かる
例えば私たちが頭を使う時、脳が働けば、きれいな血(未使用の血)が汚い血(使用済みの血)に変わるわけです。酸素が、血液中のヘモグロビンとの結合から離れて、神経細胞に移動するからです。脳を使うと酸素が必要になります。しかし、教育がうまくいかなかった場合、きれいな血がそのまま「素通り」します。今までは頭の中を通る血液が「素通り」するのを、脳の働きだと思っていたのですが、実際は反対のようです。
酸素を使った時に脳が働いているのです。なぜかというと神経細胞が酸素を必要としているからです。神経活動と酸素の消費とが同時に起きてるのです。
漢字が書けないときは、血が上るだけで、肝心な酸素が使われません。
でも、漢字が書けるようになると、
酸素を適度に使い、血が過剰に上ることもありません。
酸素を使えない状態から使えるようになる!
脳の学習をその場で観察できるのです。
2.MRIとCOEの両方を使って、最善のリハビリ・教育方法を探る
まさしく「頭は使えば使うほどよくなる」と言うことで、そういうことが、COEを使えば目の前で見えるとiうことです。この方は交通事故の後遺症で、寝たきりになってしまいました。問いかけても反応があるように見えないので、効果的なリハビリがわかりません。
脳画像MRIを見る
脳の写真・MRIには、音を聞く左聴覚野がしっかりと残っており、画像上で見ると聴覚野が太くなっていますから、働いていることが分かるわけです。
COE計測で効果的な働きかけを見つける
左脳の聴覚野から前頭葉までの範囲をCOE計測法で調べます。この方に、声をかけて問いかけたり、楽器を慣らしたりして、働きかけを行って、一つずつ脳の酸素交換反応を調べていきます。
音の中枢である側頭葉の領域が反応すれば音が聞こえているはずです。さらに意志の中枢と呼ばれる前頭葉が反応すれば、本人の意思活動の一端が証明できるはずです。
お母さんの声を聞かせたらどうでしょうか
彼に母の声を聞かせると、前頭葉の運動性言語野に相当する領域にドーンと酸素が上昇します。言葉を理解する感覚性言語野では、むしろ酸素が減っています。
外見上では、かすかな表情の変化さえ読み取ることが困難な臨床症状です。にもかかわらず脳酸素交換がもたらす脳機能サインは、非常に強く大きいものでした。母の声の呼びかけが、通常の声よりも意志の中枢である前頭葉を賦活していることがわかりました。この結果は、脳を学習させるためにどのようなアプローチをすればよいのか? 全く新しい情報を私たちに教えてくれました。
隣のベッドの子どもの名前を聞かせるとどうでしょうか?
前頭葉の言葉を話すための運動性言語野に相当する領域の酸素が、今度は減っています。感覚性言語野では、むしろ酸素が上昇しています。
隣のベッドの男の子とは、彼が重度の障害を持った後で隣合わせに生活するようになりました。ですから、障害を持ってから隣の男の子の名前を学習したことになります。本人が全く知らない子どもの名前では反応がうまく得られませんでした。このように、重度の障害者の症例から、環境によって
我々が多くのことを学んでいることやその学習過程が明らかになりつつあります。
障害者からもたらされた脳科学の進歩は、社会に実用的な恩恵をもたらしてくれると思います。
(「脳と障害児教育」より)